韓国研究者、理論上のみ存在した「液体金属」の構造を半世紀ぶりに解明…Natureに掲載

韓国の研究者が、これまで理論モデルでのみ存在していた、液体金属の電子構造を実験的に確認したことが分かった。

韓国科学省(科学技術情報通信部)は5日、キム・グンス延世大教授の研究チームが結晶固体上にアルカリ金属を噴射して、その間の界面を観測するユニークな方法により液体金属の電子構造を確認したと5日、明らかにした。

液体金属の電子構造は、ノーベル物理学賞受賞者であるフィリップ・アンダーソンが1967年に、ネヴィル・モートが1968年に考案した理論モデルである。しかし、50年以上、実験的に液体金属の電子構造を立証した研究者はいなかった。
 
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物質を構成する原子が規則的に配列された結晶性固体は、電子構造を比較的簡単に説明することができるが、原子の配列が不規則な液体やガラスのような非晶質固体などの液体金属の電子構造は説明しにくいからである。

研究者らは、液体構造のみの電子構造を把握しようとしていた他の研究者とは異なり、結晶性固体と液体金属間の界面の電子構造を把握する方法でアプローチした。

研究者は、黒リン(Black Phosphorus)という結晶性固体表面にナトリウムとカリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属を蒔き放射光加速器と、各分解光電子分光などの光を強く出す装置を用いて測定した。
 

(画像:理論的に予測された液体金属の電子構造と実験結果=韓国科学省)
 
その結果、アンダーソンやモートらが予測していた後ろに曲がる形のユニークな電子構造と電子の不完全なエネルギーギャップである「類似ギャップ」現象を発見した。

類似ギャップは、原子が不規則に配列された場合、電子が不完全なエネルギーギャップを持つようになる現象を指す。

研究者は、今回発見された同様のギャップ現象で電気抵抗がゼロになる高温超伝導現象の糸口を見つけることができるものと期待している。

高温超伝導は、絶対温度0K(マイナス273℃)に近い低温で表示される低温超電導と比較して臨界温度が比較的高い100K(零下173℃)以上で超伝導を示す現象である。

高温超伝導現象のメカニズムを解明して、常温超伝導の開発に成功すれば、エネルギー損失のない電力輸送が可能となり、磁気浮上列車やMRI(磁気共鳴画像)などの医療用診断機器を改善し、電力需給難を解決することができると予想される。

キム教授は、「不規則に配列された異種原子との衝突効果で説明した同様のギャップが高温超伝導現象を理解するために重要な手がかりになるだろう」と述べた。

今回の研究結果は、国際学術誌「ネイチャー」(Nature)に掲載された。
 
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