韓国の中央日報は14日、韓国人の「被害者意識」をテーマにした記事を掲載している。
シン・ジュンボン記者が執筆した「日本植民地支配を批判する我々に過誤はないのか」というこのタイトル記事は、西江大学のイム・ジヒョン教授の著書『犠牲者意識の民族主義』を紐解き、韓国人の被害者意識から生まれるナショナリズムについて問うものとなっている。
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シン記者は、「イム・ジヒョン教授の新しい本が両国関係の改善に役立つか分からない」としつつ、「今、両国の疎通を妨げる障害物は何なのかに対する答えを得ることができる」とし、本によると「私たちの記憶システム(memory regime)は、そのシステムを支配する犠牲者意識の民族主義が問題だと指摘している」と伝えた。
ここで言う「記憶システム」とはポーランド出身の社会学者・バウマンの「世襲犠牲者意識」をイム教授が発展させたものだ。また、「犠牲者意識の民族主義」とは「後続世代が前の世代が経験した犠牲者の経験と地位を世襲し、世襲された犠牲者の意識を介して、現在の自分の民族主義に道徳的正当性と政治的アリバイを付与する記憶書写」であるとシン記者は説明する。
つまり、日本の植民地支配の記憶を「集団相続」した韓国人たちが、私たちだけ正しく正当であるとの集団意識に過度に埋没しているのはないかという意味であり、「そのような状況では、例え、政権が変わるたびにいくら域内和合、協力、共同発展などを叫んでも過去の歴史に足を掴まれるしかない」とシン記者は捉えている。
シン記者は、「解決策は何だろうか」と問い、著書では「犠牲者意識の民族主義を《犠牲》させなければならないというのがイム教授の考えだ」とするが、「そのようなことが言葉のように容易なはずもない」とも付け加えた。
著名なユダヤ人研究者であるハンナ・アーレントが第二次大戦後のドイツを取材したときにドイツ人も被害者意識を表出したことや、日本も国民や天皇は軍部に騙されただけという文脈で被害者意識を持つ例などを挙げ、犠牲者意識が被害者だけのものではないことにも触れている。
シン記者は、「韓国は犠牲の歴史を過剰に文脈化する傾向がある」とし、「そのため、私たちの加害事実を無視することはないか」と問う。シン記者は朝鮮人B・C級戦犯の事例に触れ、「彼らの中には、イギリス人捕虜の間で悪名を馳せた捕虜監視員もいる」とし、「戦時命令に従っただけだと強弁するが募集定員を超えた自主的な支援だったという記録もある」と指摘。その上で、「植民地朝鮮人だからすべて無罪じゃないかという集合的無罪ロジックが動作するという話だ」と付け加えた。
シン記者は「記憶は過去を能動的に再構成する認識作用である」とし、「犠牲者意識の民族主義が前提する加害者-被害者の二分法にはまっては、根源的な植民地主義・ホロコースト批判はできないというのがイム教授の主張だ」と伝えた。
イム・ジヒョン西江大学教授は、韓国のポストモダン歴史学者として著名で、ポーランド史の専門家でもある。
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