韓国の農業紙が日本との「品種戦争」再発による被害を懸念している。
参考記事:韓国農業紙「日本などへの種子権利料支払いは年10億円」「シャインマスカットは希望的事例」
韓国の農業経済新聞は30日、『種子戦争で日本に敗北した《あすみ事件》、柑橘類に続きリンゴ‧梨にも拡がるか』というタイトル記事を掲載し、3年前に日本に屈したという「あすみ事件」が再発する可能性について指摘した。
「あすみ事件」とは、2018年に日本の国立研究開発法人が韓国国立種子院に対し日本品種である「あすみ」「みはや」品種保護出願することにより、済州島内300農家が生産した約900トンのみかんが出荷できなくなった騒動のことだ。
「あすみ事件」について、農業経済新聞は、「少し拡大して解釈するならば、《種子戦争》で日本に敗北した事件であると見ることができる」とし、「済州みかんの90%以上が日本の種子だからである」と伝えた。
日本側はUPOV(植物新品種保護国際同盟)の協約に基づいて品種保護を出願した。この制度は植物新品種育成者の権利を法的に保障し、品種保護権者は農家が収穫した果実の排他的権利を主張することができ、ロイヤルティと呼ばれる品種使用料を請求することができる。
韓国は2002年にUPOVに加盟している。加盟後に日本側は、日本種が圧倒的に多い韓国のイチゴ栽培に対してロイヤリティを要求したが、韓国側は日本種などと交配した国産品種「雪香(ソルヒャン)」などを開発し、韓国果樹農家もこれに乗り換えた。高級ブドウ品種である「シャインマスカット」は日本品種であるが、日本側が海外品種登録をしなかったがめ、現在は韓国が日本を上回る栽培量をほこり、海外輸出も盛んだ。
しかし、みかんに関しては、ブドウやイチゴのように「逃げ切る」ことが出来ず、「敗北」したというのが事のあらましだ。
農業経済新聞は、「本当の問題は、他の果物に比べて種子自給率が著しく低下する柑橘(みかん)はもちろん、私たちが好んで食べるリンゴ‧梨も同じような境遇にあるということにある」とし、「さらなる《あすみ事件》が懸念される」と説明した。
韓国農村振興庁の統計によると、柑橘類種子の韓国の自給率は2014年1.0%、2015年1.8%、2016年2.0%、2017年2.2%、2018年2.3%、2019年2.5%であり、「2014年に比べてわずか1.5%pの成長に留まった」と同紙は嘆いている。韓国のみかん名産地とされる済州島だが、「済州みかんの90%以上が日本品種となっている」と同紙は指摘する。
農業経済新聞は、また、リンゴの栽培でも日本品種のフジと津軽が1位と3位に、梨も日本品種のシンゴと長十郎が1位と3位、桃も日本品種の川中島白桃が最も多く栽培され、ブドウも日本産品種の巨峰とシャインマスカットが多く栽培されていると伝えた。
その上で、みかんを含むこれら品種を代替できる優良品種開発を速める必要があるとし、「あすみ事件」を忘れてはならないと警鐘を鳴らした。
参考記事:韓国紙「ベトナムは韓国産シャインマスカットが人気」「しかし中国産が15分の1価格で販売開始…」