半導体大手である台湾TSMCが日本にファウンドリ(半導体受託生産)工場を建設することをめぐって、韓国紙からこれを警戒する声が出る一方、技術レベル的に最新のものではなく気にする必要はないとの見方もある。
参考記事:韓国紙「日本の経済安保政策を警戒すべき」「韓国を戦略的に排除…日本企業損害でも」
日本経済新聞などによると、台湾TSMCは熊本に8000億円を投入しファウンドリ工場を設立する。ソニーやデンソーも投資し、日本政府が総投資額の半分を補助する案を検討中であると伝えられる。
韓国ファイナンシャルニュースは11日、『日台半導体蜜月、もたもたする韓国』というタイトル記事を掲載し、「半導体戦争は一日二日で出た話ではない。戦線も拡大している」「企業間競争を超えて国が出る段階だ」「国家間の経済同盟まで結ぶほどだ」と指摘した。
同紙は、「半導体は、ハイテク産業ピラミッドの頂点にある。他の産業を支配することができる重要な革新点」だとし、「バイデン米大統領が4月のホワイトハウスでのグローバル半導体企業とのビデオ会議でシリコンウエハを取り出した」ことにはそれだけの理由があり、ハイテク産業全般における中国への競争優位を維持するため米国が動いていると強調した。
一方でTSMCに関しては、「TSMCは民間企業だが、台湾政府が株式の7%を持つ」とし、「政府の意思なくTSMCが日本への投資に乗り出すのは難しい」「両国の経済同盟である」「中国膨張に対抗する安全保障同盟でもある」と分析した上で、TSMCがすでに日本政府の支援の下で茨城県つくば市に半導体研究開発拠点を造成する事業も進めていることにも言及した。
ファイナンシャルニュースは韓国の半導体産業については、サムスン電子やSKハイニックスなどの「顕著なグローバル企業がある」としつつ、「半導体覇権争いは企業間の戦いを超えた」とし、「日本が経済安保同盟としファウンドリ市場を掌握するTSMCを引き込んだ理由を吟味しなければならない」「米国と日本、台湾は半導体同盟という名で同じ船に乗った」と伝えた。
そして、「韓国半導体産業がぐずぐずしていると(米中間の)サンドイッチになる」と危惧している。
一方で韓国の技術メディア「IT BizNews」は10日、TSMCの日本進出にいくつかの疑問を呈している。同紙はTSMCが協業を嫌う企業で有名であることや、TSMCが熊本に建てるというファウンドリ工場が20nm以上とされることを挙げ「日本政府が掲げる《経済安保次元》という理由が、実効性があることなのか疑問も浮上している」と指摘した。
同紙は、TSMCが台湾で5nm以下の製品を生産し、米国でも5nm工程を目標に工場を建設していることを挙げ、10年前の技術に日本政府が天文学的補助金を支給しようとしていると伝えた。
参考記事:韓国紙「日本は韓国TPP加盟の条件に福島水産品の輸入を迫る」「WTO半導体訴訟は一歩も進まず」