緊迫するウクライナ情勢を受け、「韓国が第二のウクライナ」になる可能性が危惧されるなど、様々な見方が出ている。
参考記事:韓国紙「ウクライナ危機は自業自得…外勢に国防任せるのは自殺行為」「それで植民地に転落したのが韓国」
保守系紙の東亜日報は18日、イ・ミスク論説委員の論説記事『へたすれば韓国が第二のウクライナになる』を掲載し、韓国の「フィンランド化」について警鐘を鳴らした。
イ論説委員は、フランスのマクロン大統領がロシアのプーチン大統領と会談した際、冷戦時代に軍事同盟に参加せずソ連と共存したフィンランドのように、ウクライナがNATOに加盟しない案を提起したとされる説を取り上げた。
その上で、「プーチンが再び外交交渉を話すのを見るとロシアンルーレット式の崖の果て戦術が通じたようだ」としつつ、一方で「マクロンの歩みは、強大国がいつでも弱い国の運命を左右できることを示している」と指摘した。
イ論説委員は、1938年にナチスドイツに妥協した当時英首相ネヴィル・チェンバレンの例を挙げ、「チェンバレンの姿はプーチンに会ったマクロンと重なる」としつつ、それでも「プーチンの野欲は止まらないだろう」「脅迫が通じたことを確認しただけに、旧ソ連国家を相手にまた戦いをしかけることが明らかだ」と分析した。
続けて、米国の覇権弱化の中で中・ロの挑発が目立つ昨今、「世界が第二次大戦勃発前夜の1930年代のようだ」と述べた米歴史学者ロバート・ケーガンの主張を紹介しつつ、「同じことがアジアでも起こり得る」と述べている。
イ論説委員は、「習近平がプーチンの方式をそのまま朝鮮半島に代入するかもしれない」とし、「すでに中国はサード(高高度ミサイル防衛)配備時の安全保障の懸念を前面に出して、文在寅政府から《サード三不》の約束を取り付けた」「以後、文政府は冷戦時代、フィンランドがソ連に逆らう行動をしなかったかのように、一度も中国に歯向かわなかった」などと指摘した。
※サード三不政策とは:文政権が中国に対し約束したとされる3つの政策。米国のMDを導入しない、サードを追加配置しない、日米韓の3国軍事同盟をしないの3項目であるとみられているが、韓国政府がそれを公式に認めたわけではない。
その上で、与党の李在明次期大統領候補が当選すれば、これを継承する可能性が高いとしつつ、仮に「次期政権がクワッドに加盟しようとするとき、習近平はプーチンが侵攻の脅威でウクライナのNATO加盟を躊躇させたように、安全保障上の懸念を前面に出して実力行使に出たり、ロシアをモデルにした《韓国のフィンランド化》を画策したりするかもしれない」と分析している。
一方で左派系紙のオーマイニュースは、韓国の保守系紙らがウクライナ情勢を報じるなかで「ロシアの暴力性のみを浮かび上がらせている」ことは問題であると指摘した。
同紙は第二次世界大戦時にウクライナの右派勢力がナチスドイツと結託し、ユダヤ人虐殺などに加担したことなどや、米CIAが第二次世界大戦後にスパイをソ連に浸透させるため、これら勢力を戦争裁判で処罰せず、協力関係を築いたことなどを挙げた。
その上で、「このような歴史的文脈と事実を報道するメディアは見当たらない」としつつ、「これは《米国が絶対悪》と言いたいのではなくただ、過度に米国中心的な報道だけを追求すべきではない」との見方を伝えている。
他にも、過去に外国に依存して植民地と化した朝鮮の教訓と、核兵器などを放棄して欧米に協力を求めたウクライナを重ね合わせた上で、ウクライナの安全保障戦略が間違っていたと唱える向きも出ている。
参考記事:米中首脳、文政権下での韓国を訪問せず 「中国首脳訪韓しないのは異例」「バイデンは次期政権と」