【特集】韓国スーパーカー列伝② 艱難辛苦を舐めた伝説の車、その名もスピラ!…”虎の咆哮”

前回はわずか1台のみ生産されたスーパーカー「エピックGT1」についてお伝えしたが、今回は実際に量産や海外輸出もされた韓国産スーパーカー「スピラ」の話をお届けする。

(参考記事:【特集】韓国スーパーカー列伝➀ 財閥子孫が大金投じ開発した845馬力夢の国産車…しかし

エピックGT1は財閥御曹司の道楽が高じて作られた車であり、実質カナダ産という代物だったが、スピラは自動車の専門家によって作られた純韓国車だ。スピラはエピックGT1よりもある意味で紆余曲折を経た車なのだが、順を追って解説しよう。

スピラのルーツはプロトモータースという自動車デザイン企業にさかのぼる。プロトモータイスが事2001年に公開したコンセプトカー「PS-II」がスピラのその原型だ。これを作ったのは同社のキム・ハンチョル社長だ。彼は、元は韓国の中堅自動車メーカーである双龍(サンヨン)自動車でデザイナーをしていたのだが、1994年に現代自動車の研究員だったチェ・ジソン氏(妻)とともにプロトモータースを立ち上げた。

キム・ハンチョル当時社長/Proto Motors

同社は当初、コンセプトカーのデザインなどを手掛けていたが、キム社長の長年の夢であるスーパーカーの製作を手掛けるため、手始めとしてまずPS-Ⅱを設計した。公開されたPS―Ⅱは韓国内での反応もよく、2002年に量産を開始すると発表された。

しかし、プロトモータースには資金が無かった。キム社長もデザイナーとしては優秀だが、経営者としては必ずしもそうではなく、スーパーカーの量産も中々実現しなかった。そこに現れたのが韓国のIT長者であるパク・ドンヒョク氏だった。

「オウリム情報技術」というIT企業の創業者だったパク氏は、自動車畑の人間ではないが、韓国のネットセキュリティ事業で成功した人物だ。2006年にプロトモータースは、パク氏が買収する形でオウリムモータースという名前の会社として再スタートを切る。そして、コンセプトカーPS-Ⅱの量産タイプとして「スピラ」を本格量産することも明らかにされ、2008年3月頃から注文制作を受けることになった。しかし、ここでまた障害が持ち上がった。

Oullim Motors SPIRRA

スピラは翌2009年になっても開発中というニュースだけが報じられるも、一向に量産されなかった。注文をした顧客も待ちぼうけをくう始末だった。このときに持ち上がった障害は韓国の自動車関連法だった。

オウリムモータースによる、韓国の自動車関連法規のために量産が遅延したという。当時、オウリムモータースのような小規模メーカーが韓国にはなく、いざ検査を受けるにもまとまった台数の車を納車する義務があり、そのため予想外の時間と費用を要したという。

Oullim Motors SPIRRA

そのため、オウリムモータース側は海外輸出を先行させた。同社によるとロシアやマレーシアなどに計150台が販売されたと伝えられる。

そして2011年、プロトタイプ発表から10年かけ、韓国でもようやくスピラが発売されることになった。それに伴いスペックも公開された。スピラは現代自動車製2.7LV6デルタエンジンを搭載。

Oullim Motors SPIRRA

ボディサイズは全長4355×全幅1924×全高1215mm。ホイールベースは2600mm。チューブラースペースフレーム構造にカーボンファイバー製ボディを持ち、重量は最軽量モデルで1200kgに仕上げられた。

車体は虎をイメージしてデザインされた。排気音も虎の咆哮を意識して人為的にデザインされたと伝えられる。

仕様別では175馬力のスピラN(約1千万円)、330馬力のスピラS(約1千万円台前半)、420馬力のスピラT(約1千万円台後半)、500馬力のスピラEX(約2000万円)という4タイプが発表された。EXの最大時速は300km/sを超えた。

Oullim Motors SPIRRA

スピラが韓国内で何台売れたのか正確な統計は明らかにされていないが、一説では30台程度と伝えられるなど、思ったより少ない。しかし、ソリッドなデザインや、韓国初の量産型スーパーカーということで、今でも自動車好きの間ではその名が語り継がれている。

そんな伝説の車スピラだが、発売からすぐにまた障害にぶつかる。オウリムモータースは横領や粉飾会計の疑惑が浮上し、背任の容疑で2012年11月に上場廃止に追い込まれる。ハン氏は疑惑を否定したが、間もなくスピラの産みの親であるキム・ハンチョル元社長とその妻を含む多くの社員が去って行った。

Oullim Motors SPIRRA

法廷闘争はその後も長年に続き、その間、スピラが生産されることはなく、結局は自然消滅という寂しい道を辿っている。ちなみにオウリムモータースの後継会社はなぜか「スピラTV」というオンラインメディアを運営しているが、自動車とは関係のないニュースなどが配信されるなど、迷走している。

一方でスピラは現在も韓国の中古市場で数台が取引されているようで、自動車系YouTubeチャンネルで何度かその姿を現し、迫力のある排気音を披露している。(以下動画参照)

(参考記事:韓国現代自動車、フェラーリのデザイナーを引き抜き…F12ベルリネッタなど手掛けた実力者
(参考記事:全世界で最も検索された自動車ブランドは?…韓国起亜が5位 トヨタは3年連続1位
(参考記事:韓国現代自動車、米国でのリコール台数が海外系1位に…ホンダの10倍超

(参考記事:韓国現代車が「デロリアン」のデザイナーと提携 幻の韓国車を復元へ
(参考記事:韓国紙「レクサスLFAが韓国公道で目撃…ネットは賞賛の嵐」「かっこいい…狂いそう…日本車だけど…」
(参考記事:韓国自動車紙「かつて日本車は破壊的で最先端だった」「今はガンダムのよう…感性より数字に」