現代自動車の韓国市場シェアが9割超に 独占利益活かし世界シェアも3位浮上

韓国の自動車市場における現代自動車グループの独占構造が深まっている。現代自動車は90年代末に起亜自動車を買収して以降、韓国内でのシェアを徐々に高めてきたが、直近2月に国内(韓国)車比率で9割超というシェアを占めるに至っている。

(参考記事:韓国紙「現代自動車が販売台数世界3位に…ルノー・日産・三菱連合抜く」「1位はトヨタ」

韓国完成車メーカーは現在、現代自動車、起亜自動車、双龍自動車、ルノー・コリア、GMコリアの5社が存在する。これら5社の直近2月の国内販売量は合計12万5,151台で、このうち現代自動車(65,015台)と起亜自動車(50,016台)は11万5031台を販売し、合わせて91.9%のシェアを記録した。残りの3社を合わせてもシェアは8.1%に過ぎない。

現代車と起亜の合算シェアは前年同月と比較しても大きく伸びている。昨年2月の89.1%から1年で2.8%ポイント増加した。前月(89.8%)と比較しても2.1%ポイント上昇した。現代車と起亜自動車の韓国市場独占構造が深まっている。

さらに、自動車業界の電動化が進むなか、現代・起亜の独走はさらに加速すると予想される。他の中堅3社は電気自動車(EV)の販促が積極的ではない。

現代・起亜は世界的にみてもEV開発に積極的な動きをみせており、現代のEVアイオニック5や起亜のEV6は各国の主要自動車賞を席巻している。一方で韓国GMの電気自動車「ボルトEV」は2月の販売量が0台で、双竜車の「コランドエモーション」は227台にとどまった。ルノー・コリアは国内で販売するEVモデル自体がない。

双竜車は企業再生手続きを終えたばかりであるため、現代自動車・起亜自動車に比べて資本力と規模の経済で著しく劣る。韓国内に生産工場を置いてはいるが、海外からも車を輸入しなければならないルノー・コリアや韓国GMも、すでに現代・起亜優位が固定化された韓国市場においてシェアを競う意欲がなく、新車投入の頻度も鈍い。

アイオニック5/HYUNDAI

現代自動車は1998年に当時業界3位だった起亜自動車を買収した。これによって現代・起亜のシェアは50%を超えることから、韓国内でも市場独占を懸念する声もあったのだが、折からのIMF危機の被害もあったことから、結局は承認された。

そこから徐々にシェアを伸ばし、近年は常時8割前後の市場シェアを占める現代・起亜だが、韓国内では競争相手が事実上存在しないことから、最近では海外市場でも競争力を高めている。現代・起亜がグループ別で昨年、トヨタとフォルクスワーゲンに次ぐ世界3位の販売台数を記録するなど存在感を高めているのも、韓国市場での独占構造があってこそだ。国内に憂いが無いので、海外での競争や技術開発にリソースを存分に割ける。

また、韓国市場で絶対的な地位にいることから、生産量や人員を減らす理由がなく、高い賃金とワーク・ライフ・バランス(仕事と生活のバランス)、定年保障などを保証できるため、有能な人材はまず現代・起亜を目指す。それによって現代・起亜の優位はますます固まり、逆に中堅3社の立地はさらに弱まるという構図だ。

日本を含む主要国市場において、ここまで優位な地位を築いた例は現代・起亜以外に例がない。さらに現代自動車グループは傘下・関連企業に自動車部品企業(現代モービス)や製鉄企業(現代製鉄)、戦車や電車を作る企業(現代ロテム)やロボット企業(ボストンダイナミクス)も抱えており、製造コストパフォーマンスや次世代車の開発においても優位な地位を築こうとしている。

(参考記事:欧州市場で韓国現代自動車グループが4位に トヨタ系やBMWグループ上回る
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(参考記事:米モータートレンド誌「業界影響力1位は現代自動車会長」「豊田章男社長は30位」

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