韓国LGESの研究陣が「シリコン負極材」の性能向上技術を開発 国際学術誌に掲載

連世大学(ヨンセ大学)と共同で、次世代バッテリー市場の重要技術とされる「シリコン負極材」の性能向上技術を開発した。(※論文名など詳細は記事末尾に掲載)

連世大学の化学工学生命工学科のイ・サンヨン教授とイ・ヨンミン教授の研究チームは、LGエナジーソリューションと共同で研究を行い、充放電中に体積が膨張するシリコン負極材の技術的課題を解決する手がかりを見つけたことを10日に発表した。

シリコン負極材は、バッテリーの負極にシリコン(Si)を加えたものである。従来の天然グラファイトで作られた負極材が1g当たり372mAhのエネルギー密度を持つのに対し、シリコン負極材は最低でも400mAh以上のエネルギー密度を提供する。同じ重量であれば、より多くのエネルギーを蓄えることができ、電気自動車の1回の充電距離を延ばすことができる。

しかし、バッテリーの充放電中に体積膨張が発生するため、実際の適用には多くの課題があった。体積の変化によりセル構造が崩れたり、セパレーターに悪影響を与えたりすることで、バッテリーの寿命と容量の確保に困難をきたしていた。

研究チームは、無機物ベースの高強度セパレーターを設計するなどして問題解決の手がかりを見つけた。従来はシリコン負極材のみの改善に取り組み、劣化現象の改善を試みていたが、セパレーターなど他の素材との組み合わせを通じて、全体的なバッテリーシステムの観点から解決策を見出した。

改善された素材技術を適用したバッテリーは、高速充放電を400サイクル実施した後でも88%以上の容量保持率を示した。

イ・サンヨン教授は「今回の研究の最大の意義は、これまでバッテリー分野での大きな課題であったシリコン負極材の寿命問題を解決するために、素材そのものを超えてバッテリーシステム全体を見直す革新的なアプローチを示した点である」と述べた。

研究成果は、科学ジャーナル「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」に、「シリコン負極材の劣化によるリチウム二次電池セパレーターの機械的損傷」(Mechanical shutdown of battery separators: Silicon anode failure)というタイトルで発表された。

画像:信越化学