サムスン電子のQ3決算発表全文訳…半導体赤字は4150億円

サムスン電子は、連結ベースで売上高67.4兆ウォン(約7.46兆円)、営業利益2.43兆ウォン(約2590億円)となる2023年第3四半期(7~9月)の業績を発表した。以下に発表全文を掲載する。

※サムスン電子の発表資料原文(ハングル):https://news.samsung.com/kr/%ec%82%bc%ec%84%b1%ec%a0%84%ec%9e%90-2023%eb%85%84-3%eb%b6%84%ea%b8%b0-%ec%8b%a4%ec%a0%81-%eb%b0%9c%ed%91%9c

全社売上高は、スマートフォンフラッグシップ新製品の発売とディスプレイプレミアム製品の販売拡大により、前四半期比12.3%増の67.4兆ウォンを記録した。

営業利益の場合、DS部門の赤字が減少する中、スマートフォンフラッグシップの販売が堅調で、ディスプレイ主要顧客の新製品需要の増加により、前四半期比1.77兆ウォン増の2.43兆ウォンを記録した。

 
[第3四半期実績]

□DS(Device Solutions)部門の売上高16.44兆ウォン(約1.8兆円)、営業利益-3.75兆ウォン(約4150億円)

メモリ半導体は▲HBM(High Bandwidth Memory) ▲DDR5(Double Data Rate 5) ▲LPDDR5xなど高付加価値製品の販売拡大と一部販売価格の上昇により、前四半期比赤字幅が縮小した。また、景気の底値に対する認識が広がり、部品在庫を確保するための顧客からの購入問い合わせが多数寄せられた。

システムLSIは、主要用途の需要回復が遅れ、在庫調整のため、業績改善が遅れた。

ファウンドリは、ライン稼働率の低下などで業績不振が続いたが、高性能コンピューティング(High Performance Computing、HPC)を中心に過去最大の四半期受注を達成するなど、将来の準備を強化した。

□DX(Device eXperience)部門の売上高 44.02兆ウォン(約4.9兆円)、営業利益 3.73兆ウォン(約4130億円)

MX(Mobile eXperience)は、フラッグシップ新モデルの発売により、売上及び営業利益が第2四半期比で堅調な成長を見せた。

スマートフォンとタブレット、ウェアラブル製品など第3四半期の新製品がすべて好調で、フラッグシップの比率が拡大したことで販売単価が上昇し、全体的な売上が成長し、2桁の収益性を確保した。

ネットワークは、通信事業者の投資減少により、北米など主要海外市場の売上が減少した。

VD(Visual Display)の場合、グローバルTV需要は前年同期比で減少したが、▲Neo QLED ▲OLED ▲超大型など高付加価値製品の販売に注力し、プレミアム市場のリーダーシップを拡大し、前年同期比で収益性を改善した。

生活家電は繁忙期効果の減少で前年同期並みの実績を記録した。

□ハーマン 売上高3.8兆ウォン(約4200億円)、営業利益0.45兆ウォン(約500億円)

ハーマンは、電装顧客からの受注拡大とポータブルスピーカーなどコンシューマーオーディオ及びカーオーディオの販売拡大により、過去最高の四半期業績を達成した。

□SDC 売上高8.22兆ウォン(約9100億円)、営業利益1.94兆ウォン(約2100億円)

ディスプレイは、中小型パネルの場合、主要顧客のフラッグシップ製品の発売に積極的に対応し、前四半期比大幅な増益となった。大型パネルは歩留まり向上と原価改善などで赤字幅が縮小した。

□為替の影響

第3四半期は前四半期比でドル、ユーロなど主要通貨の平均為替レートの変動が大きくなかったため、全社営業利益への影響は非常に少なかった。

 
[第4四半期の見通し]

第4四半期はグローバルIT需要が徐々に改善すると予想される中、DS部門はHBMなど高付加価値製品の販売拡大と技術リーダーシップに集中し、ディスプレイとDX部門はプレミアム戦略を強化して堅調な収益性を維持する計画だ。

□DS 部門

メモリは、顧客の在庫水準が概ね正常化される中、メモリ市場の回復傾向が加速し、前四半期比価格上昇幅が拡大すると予想される。高収益製品である車載向け販売比率を拡大し、生成型AI需要の増加に合わせ、HBM3の量産販売を本格的に拡大する計画だ。

中長期的な競争力強化と先端工程比重拡大のための持続的なインフラ投資で、平沢3期が初期稼働中であり、これを基盤に ▲DDR5 ▲LPDDR5x ▲UFS(Universal Flash Storage) 4.0など新規インターフェースの需要増加にも積極的に対応する計画だ。

システムLSIは、モバイル市場の需要回復が見込まれる中、主要モバイル顧客社の新製品部品供給増加で大幅な業績改善が期待される。

ファウンドリは、主要顧客の新製品発売に向けた半導体需要の増加が予想されるため、業績改善が期待される。

□DX部門

MXは、スマートフォン市場の競争が激化する中、年末の繁忙期に様々なプログラムを通じてフォルダブル新製品とS23シリーズの堅調な販売を継続的に推進する計画だ。タブレットとウェアラブルもプレミアム新製品を中心に取引先との協業を通じて販売を拡大する方針だ。

ネットワークは、海外事業の新規受注努力を継続する予定だ。

VDは、グローバルTV市場の不確実性が続く中、▲QLED▲OLED▲超大型などのプレミアム市場の需要は堅調であると観測される。

ピークシーズンの需要を先取りするため、オン-オフラインチャネルの販売競争力を持続的に強化し、▲Neo QLED ▲98型超大型TV ▲ライフスタイルスクリーンなどの高付加価値製品群の比率を拡大して収益性確保に注力する方針だ。

生活家電はプレミアムを中心に販売比率を拡大し、収益性確保に重点を置く計画だ。

□ハーマン

ハーマンは、電装製品の受注好調が続く中、年末の繁忙期を迎え、コンシューマーオーディオの販売を拡大し、堅調な業績達成を推進する方針だ。

□SDC

ディスプレイは、中小型の場合、プレミアムスマートフォン向けOLED需要の好調で堅調な業績が持続すると予想される。大型は年末の繁忙期に積極的に対応し、QD-OLEDの販売を拡大する方針だ。

 

[2024年の見通し]

2024年はマクロ経済の不確実性が存在すると予想されるが、メモリ市況とIT需要の回復が期待される。

DS部門は、高性能・先端工程製品の販売と多様な応用先からの新規受注を持続的に拡大し、技術競争力と市場リーダーシップをさらに強化する方針だ。

DX部門は、フラッグシップを中心にスマートフォン販売を拡大し、超大型テレビ市場をリードしてプレミアムを中心に競争力を強化する方針だ。また、AI技術の適用を拡大し、スマートシングスを通じた顧客カスタマイズの超連結体験を提供する一方、XR(eXtended Reality)など新成長分野の技術確保も積極的に推進する計画だ。

□DS部門

メモリは、在庫の健全化や大容量化傾向などで需要回復が見込まれる中、先端工程製品の販売を積極的に拡大する計画だ。また、業界最高レベルの生産能力を基盤に▲HBM3 ▲HBM3Eの比率を拡大し、高性能・高帯域幅の需要に積極的に対応する計画だ。

システムLSIは、フラッグシップ製品の販売比率を拡大して収益性を改善し、モバイル市場以外の事業領域を拡大し、市場の変動性に影響を受けにくい堅固な事業構造を構築していく計画だ。

ファウンドリはGAA(Gate-All-Around)3ナノ2世代プロセスの量産とテイラー工場の稼動を通じて技術競争力をさらに強化し、▲高性能コンピューティング▲車両▲消費者など多様なアプリケーションに受注を拡大していく方針だ。

最近関心が拡大しているアドバンストパッケージ(Advanced Package)事業の場合、国内外のHPC顧客からロジック半導体とHBM、2.5Dパッケージングを網羅するターンキー(Turnkey)注文を含む多数のパッケージ事業を受注し、2024年に本格的な量産および事業拡大が期待される。

□DX部門

MXはプレミアムスマートフォンの経験の完成度をさらに高め、フォルダブル市場のグローバルリーダーとして差をさらに広げる計画だ。これにより、▲年間フラッグシップ出荷量の2桁成長▲市場成長率を上回るスマートフォン売上成長を達成できるよう努力する計画だ。

タブレットは大画面トレンドに適合するプレミアム製品ラインアップを強化し、ウェアラブルはウェルネス(Wellness)機能を強化してライフスタイルを重視する顧客の需要に積極的に対応する方針だ。

また、ユーザーが多く使う核心機能に生成型AI技術を積極的に適用し、より創造的で便利で超個人化された経験を提供する計画だ。また、XR、デジタルヘルス、デジタルウォレットなど未来成長分野に対する先行R&Dと投資を強化する方針だ。

ネットワークは、海外事業の適時対応を通じた売上成長を推進し、新規事業の受注活動や5Gコアチップ、vRAN(仮想化基地局)などの技術リーダーシップも持続強化する方針だ。

VDは、▲プレミアム▲ライフスタイルを中心に製品革新を強化し、2024年開催予定の各種スポーツイベントと連携して超高画質超大型テレビ市場をリードしていく計画だ。

生活家電は、スマートシングスを基盤に家電と機器間の連動経験を高度化し、AI家電新製品の全世界同時発売を通じてプレミアムリーダーシップを強化する一方、システムエアコンなど高収益製品の販売を拡大する計画だ。

□ハーマン

ハーマンは、車内の顧客体験を強化し、電装ディスプレイなど新規分野の事業受注を拡大し、ホームオーディオなど高成長製品への対応を強化する計画だ。また、サムスン電子との協業を拡大し、製品の差別化を推進する計画だ。

□ SDC

ディスプレイは、中小型の場合、技術リーダーシップを基にスマートフォン市場での地位を固めるとともに、新規応用先需要の拡大に積極的に対応する計画だ。大型は、ラインナップの拡大と生産性向上を基に、プレミアム市場における基盤強化と収益性改善を推進する予定だ。

 

[設備投資]

第3四半期の設備投資11.4兆ウォン...今年53.7兆ウォンで年間過去最大の投資額

第3四半期の設備投資は11.4兆ウォンで、事業別ではDS部門10.2兆ウォン、ディスプレイ0.7兆ウォン水準だ。第3四半期累計では36.7兆ウォンが執行され、DS部門33.4兆ウォン、ディスプレイ1.6兆ウォン水準だ。

2023年の年間設備投資は約53.7兆ウォン水準になると予想され、年間最大規模の設備投資を実施する予定だ。事業別ではDS47.5兆ウォン、ディスプレイ3.1兆ウォンだ。

メモリの場合、中長期的な需要に対応するための平沢3期終了、4期の骨格投資および技術リーダーシップ強化のためのR&D用投資の比率拡大が予想される。特に、業界最高レベルのHBM生産能力を確保するための投資など、新技術投資を積極的に進めている。

ファウンドリは、先端工程の需要に対応するための平沢生産能力の拡大と未来対応に向けた米国テイラー工場のインフラ投資などにより前年比で増加する見通しだ。

ディスプレイは、IT OLEDおよびフレキシブル製品対応のための投資を中心に執行される予定だ。

サムスン電子は今後も未来競争力確保のための施設投資とR&D投資を着実に続けていく方針だ。

 
[持続可能性経営]

サムスン電子は11日、米経済誌フォーブスが発表した「世界最高の職場」評価で4年連続1位に選ばれた。

フォーブスは50カ国以上の様々な企業に勤務する17万人以上の役職員を対象にアンケートを実施した。会社の人材育成 ▲勤務環境と福祉 ▲多様性 ▲自社の製品とサービスに対する誇りなどについて肯定的な評価を受けた。

また、サムスン電子は昨年9月、同伴成長委員会が選定する「2022年度同伴成長指数評価」で12年連続最優秀評価を受けた。

サンセン・ムルテ支援ファンド造成を通じた協力会社のR&D・設備投資支援 ▲過去10年間、全額無償で1,800社以上の協力会社にコンサルティングを通じた製造・品質革新支援 ▲中小企業の競争力向上のための「スマート工場」構築支援など、同社の相生協力努力が評価された。

(以上、コリアエコノミクス編集部訳)