韓国紙「サムスンが無機フォトレジストを開発」「JSR子会社と競争に」

サムスンが半導体超微細回路工程で「ゲームチェンジャー」素材として注目されている無機フォトレジスト(PR)の開発に着手したことが分かった。無機PRは、半導体露光工程で汎用的に活用する有機物PRより丈夫で堅牢な回路を作ることができるという利点がある。

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ソウル経済新聞は7日、サムスン電子は2日(現地時間)、米国で開かれた世界最大の光工学会「SPIE 2023」で、世界の極紫外線(EUV)用PR動向とともにサムスンSDIの無機物PR開発状況について言及したと伝えた。

サムスン電子側はこの発表で「サムスンSDIがサムスン電子に何度も無機物(inorganic)PRサンプル製品を供給した」と説明した。サムスンSDIの無機物PR開発ニュースが公開されたのは今回が初めてだ。ソウル経済新聞は「昨年2021年、サムスンSDI電子材料事業部がPR開発に乗り出したことが報じられてから約2年ぶりに、より具体的な会社の技術ロードマップが明らかになった」と伝えている。

サムスンSDIは2019年7月に日本政府がEUV用PRの輸出規制(輸出管理強化)を行って以来、サムスン電子の日本製PR依存度を下げるために研究を開始したと伝えられる。

半導体3ナノ量産開始を祝うサムスン電子社員ら/Samsung

これまでPRは、炭素・酸素・水素などを含む「有機物」の形で作られていたが、回路の幅が10ナノメートル(nm-10億分の1m)以下の微細半導体では限界に直面しており、この問題を解決するために登場した素材が無機物PRだ。

無機物PR分野では、日本のJSRの子会社である米インプリアが有力企業として挙げられる。同社はEUVと相性の良いスズ(Sn)ベースの金属粒でPRを製造し、現在まで世界で唯一、無機物PRを量産している。SKハイニックスは、メモリ半導体業界で初めて同社と無機物PRを共同研究すると発表した。

一方でこの分野ではインプリアが様々な特許権を確保していることから、「サムスンSDIがこの市場に参入するには、インプリアが保有する特許網を超えた差別化技術を実現しなければならない」との見方をソウル経済は伝えている。

7日12時現在、韓国株式市場においてサムスンSDIの株価は前日比1万8千ウォン上昇(2.3%増)となる79万9千ウォンで取引されている。サムスンSDIはサムスン電子が最大の持分比率(19.58%)を持つ子会社だ。サムスンSDIは、電気自動車用バッテリーをはじめ、スマートフォンなどのモバイル機器用バッテリー、ESS(エネルギー貯蔵装置)、太陽光、LEDなど多様なエネルギーソリューション製品を生産している。

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