韓国紙「日本の蒸着機1台に1500億円…投資ジレンマに陥る韓国ディスプレイ業界」

韓国のサムスンディスプレイは、2026年までに有機EL(OLED)製造ラインに4兆1000億ウォン(約4千億円)の投資をする計画を発表しているが、OLEDプロセスの主要装置である蒸着装置の価格交渉が順調でないことが明らかになった。

(参考記事:「韓国のディスプレイ産業は困難にあるが、有機ELが突破口になる」信用評価機関

韓国の経済紙であるチョソンビズは12日、この件を取り上げ、市場独占企業である日本のキヤノントッキが蒸着装置1台あたり1兆5000億ウォン(約1500億円)以上の価格を要求しており、OLED大手のサムスンディスプレイやLGディスプレイは設備投資の負担が大きくなり、中長期的な収益性の保証が難しくなることを懸念していると伝えた。

サムスンディスプレイやLGディスプレイは、アップルのIT向けOLED採用計画に合わせて投資を本格化する計画だが、唯一の第8世代OLED蒸着装置メーカーであるキヤノントッキの装置製造力が不足しており、投資スケジュールと生産能力を十分に確保できるかどうかは不透明な状況だという。

蒸着は、真空中で有機材料を加熱してパネル基板に取り付けるOLEDパネル製造の必須プロセスだ。蒸着の方法には、基板を垂直に立てて有機物を蒸着する方法と、基板を水平に置いて蒸着する方法がある。

サムスンディスプレイは当初、日本のアルバックの垂直蒸着装置を8世代蒸着プロセスで導入しようとしていたが、技術的な問題からアップルが拒否感を示し、キヤノンの水平蒸着装置を導入する方針に変更したという。キヤノンの水平蒸着技術は、既にサムスンディスプレイの第6世代OLEDプロセスで利用されている。

チョソンビズによると、キヤノントッキ側が、自社の装置がアップルの好みに合うことを知っているため、高価格を要求しているという。サムスンディスプレイ側は韓国のソニックシステムや米アプライドマテリアルズを蒸着機の調達先に変更することも検討していると同紙は伝えている。

この報道をみた韓国のネットユーザーからは以下のようなコメントが投稿されいている。(※ネイバーニュースコメント参照)

「(韓国は)経済規模だけ大きくなっただけで、中身を見てみると、核心的な素材・部品・装備・設計などは全て日本かヨーロッパ~アメリカ産か、あるいはロイヤリティを払っている状況だ」
「日本は高付加価値B2Bに移行してから30年近く経つが、世界の工場自動化のほとんどを日本が占有し、しかも世界1位の投資対利益率を誇る」
「これまで我が国は何を根拠に自国をIT強国と自称していたのか」
「すぐに内製化すべき。独占は即ち価格上昇だ。ASMLだってそうだろ」
「15年位前に日本の精密システムを輸入するため赴いたことがあるが、売り上げの多い企業なのに工場長が自らラインの組み立てに加わっていて驚いたことがある。日本はそういう国なんだ」
「韓国はあくまで生産強国に過ぎないんだ」
「日本の基礎技術に追いつくにはまだ遠い」

以上 コリアエコノミクス編集部

(参考記事:韓国紙「日の丸企業JOLEDが破綻…韓中との競争に敗北」
(参考記事:サムスンがトリフォルドフォン(三つ折りスマホ)の特許出願…アップル等の追撃遠ざける戦略?
(参考記事:韓国紙「サムスンが日本に先端半導体拠点を設立へ」「100億円以上の補助金獲得か」